マーケティングの活動の一つで、かつ核になってくる業務が顧客や見込み顧客を理解することです。その方法論が様々で、皆様も勉強をしていくつかの手法をすでにご存じかもしれません。実際に行った方もいらっしゃることでしょう。

人について理解を深めるために用いる手法を「定性調査」を中心に網羅しておさえることができるものが本著。手法や技術的な話に加え、基本的な考え方についても一通り学ぶことができるものです。

著者も述べていますが、「人の気持ちや真実が知りたい」というのは、人類の永遠の課題と言ってもいいかもしれません。「十人十色」という言葉がありますが、今では価値観の多様化や生活者個人の中でも多様化が進み「一人十色」とも言われるようになりました。皆様もその時々の状況に応じて、「働く自分」「友人と遊んでいる自分」「家族と過ごしている自分」など自分の役割を担っているのではないでしょうか。そして、そのときの役割に応じて感じていること、大切にしていること、とる行動が変わるということがあると思います。人の活動範囲が広がっていく中、そのように一人が担う役割も多様化していきやすい状況にあると言うことができるのではないでしょうか。それが、人に対する理解をますます複雑にしていると言えそうです。と同時に、現在のマーケティングの醍醐味ともいえるかもしれません。

また、「氷山モデル」や「ジョハリの窓」などの理論でも共通して指摘していますが、人の意識や気持ちには階層や領域が存在しており、それを掘り下げてつかみにいかないと人の行動や態度の核心に迫ることは困難です。そのために、これまで様々な手法や考え方、ノウハウが培われてきました。

著者も指摘しているのが、「みる・きく・感じることの重要性」です。インタビューや行動観察など、手法は様々ですが、直接人に会って話を聞き行動を見たりすることで得られる気付きは多くあります。もちろん、その気付きを得るためには実施する側の瞬時に「必要な情報(原石)を見分ける力」と「感じる力」が求められます。それによって、得られる成果も雲泥の差が出てくるものです。泥臭い手法は敬遠されがちですが、だからこそ意味ある情報を得られるもの。絶対にバカにしてはいけません。

市場や生活者の変化をどのように「みて(見る、視る、観る)」、どのように「きいて(聞く、聴く、訊く)」、そこからどのように「感じて」何に気づけるのか。そして、そこからどう「カタチにしていく(役立てる)」のか。勘所をつかむためにも、その積み重ねを大切にしていく必要があります。そのためのヒントを、本著を通して得ることもできるのではないでしょうか。

「定量調査」も重要な手法ですが、その解釈を行い意味あるアクションにつなげていくためにも、「定性調査」を通してこのような勘所をおさえておくことが役に立つのではないかと思います。自分もいろいろと失敗したことがあるなと思い返しつつ・・・。

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