マーケティング活動を行っていく上で、顧客理解はとても重要な位置をしめています。核といっても良いでしょう。そのための有効、かつよく使われる手法としてインタビューがあります。皆様も実施されたことがあるのではないでしょうか?そして、なかなかうまくいかないことにもどかしさを感じたことのある方もいらっしゃるかもしれません。

インタビューのために特化した本ではありませんが、そのために必要な基礎力の一端がまとめられていると思えるのが本著です。ノウハウに関わる書籍は多くありますが、それを使いこなすための基礎力があってノウハウも初めて活きてくるものなのではないでしょうか。本著は、その基本的なことに改めて立ち返らせてくれる1冊です。

著者によると、ロジカルリスニングとは「相手の話を聞きながら、相手の頭の組み立て方とその意図を理解する」スキルのことです。そのためには、人とコミュニケーションをとるために必要な「対人力」と物事を筋道立てて考える「思考力」のどちらも不可欠。自分の頭の中で「ものごと」を組み立て、それを相手にわかりやすく伝え、話を聞きながら相手の頭の中で組み立てられたことを理解し、複数の相手とお互いの考えを共有しながら新たな考え等を共創していくことができる力とも言えます。

スキル教育の分野では保有能力発揮能力という視点で能力を分類する方法があります。著者が挙げている例を紹介すると、100mを11秒で走れるというのは保有能力であり、野球選手であれば走塁が早くできる、盗塁が確実にできるというのが発揮能力になります。保有能力を高めれば、試合の際に発揮能力をより高いレベルで実現できるでしょう。

では、ロジカルリスニングを発揮能力として見た場合、その保有能力は何なのでしょうか?著者はそれを、知性、感性、理性の3つに分けています。

知性には、コミュニケーションに関する「知識」と「思考力」が含まれます。そして、感性には人に対する「感受性」、それを高めるために不可欠な「オープンマインド(心を開いている状態)」が含まれます。最後の理性には、自分自身の思考のバイアスや感情などを認知する「自己認知力」と、感情などをコントロールする「自己管理力」が含まれます。

知性がいかに優れていてロジカルに質問をすることができたとしても、相手の気持ちや立場などを理解して汲み取れなくては相手の本音を聞くことができないということもあるでしょう。また、自分の色眼鏡に気づかなければ、それに基づいて相手から得られた情報を判断してしまい、結論を歪めてしまうこともあり得ます。

インタビューに限った話ではないですが、これらを意識して鍛錬しているか否かで、成果は大きく変わってきます。具体的なテクニックや方法論に入る前に、「聴く」ということを考え直してみる。気づきが多い1冊です。

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