マーケティングの本質は、顧客にとっての価値を生み出すことです。顧客に価値を提供することで満足度を高め、収益を上げていく。それができなければマーケティングが機能しているとは言えません。

ただ、顧客に価値を提供するといっても一筋縄ではいきません。顧客の価値が多様化し、社会も成熟社会になったと言われて久しい現在、それを実現するのは意外と難しい(でも、意外とシンプルだったりもします)のではないでしょうか。それを考える上で参考になるのが本著。日本コンサルティング協会で理事を務めるマーク・E・ムネヨシ氏が、自身の経験などをもとに成熟社会で顧客のロイヤリティを高めるために必要なことを述べています。

著者は、顧客ロイヤリティを高めるためにマニュアルやルールに束縛されすぎずに顧客に対してワンストップで柔軟に対応できることが重要と指摘しています。もちろん、コアとなる業務をプロフェッショナルとして高いレベルで行えることが前提です。成熟した社会では個々の価値観やニーズは多様化するもの。昔のように組織としてマスにアプローチするコミュニケーションは通用しにくくなってきているとする著者。個である社員と顧客である個人のつながりを通した信頼関係がより重要になってきているといいます。

では、コア業務を中心にワンストップで周辺業務までカバーできていたらそれでよいのでしょうか?決してそうではありません。最も大切なのは、「顧客のためになろうと考える心」です。やらされ仕事ではそのような気持ちをもつことができません。そのためには、「会社のエクセレンス構想」と「個人のエクセレンス構想」を融合させて「社員のエクセレンス構想」を作り上げることが大切だと著者は指摘しています。つまり、「組織としては○○を目指したい。あなたは●●を目指したいか。なら、向かう方向は一緒だから協力してそれぞれが実現したいことを実現しよう!」ということです。仕事を通して実現したいことが実現できる。それが社員個人のモチベーションを高め、自発的にそのような価値を提供するようになると考えています。

ただ、組織の最適な在り方は置かれている状況によって異なると思います。こちらで紹介している在り方も唯一の正解ではないのではないでしょうか。状況に応じて、最適な在り方を模索したいですね。

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