マーケティングに限った話ではないですが、ビジネスにおいて情報は命とも言えます。情報を制する者は勝負を制すとも言いますが、それだけ情報が重要な意味をもってくるのは間違いないでしょう。

情報力が身につき有意義な発見があるという理由で、情報量は多いほど良いと言われることもあります。しかし、それは果たして本当なのでしょうか?情報をたくさん集めたけれど、「で、どうすればいいの?」「何が言えるの?」と途方に暮れた経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。私自身もマーケティングの仕事に携わる中で、そのようなシーンに出くわすことが多くありました。

情報量の多さにも意味はあるかもしれません。しかし、それ以上に大切なのは、情報を読み込んで自分の知識、知恵、洞察につなげること。要は何なのかをしっかり考え抜くこと。つまり、情報を活かすことが最も大切なのです。当たり前だと思われるかもしれませんが、基本的なことはかなり難しいもの。いつの間にか情報に溺れてしまっていることはないでしょうか?自戒の念をこめて、普段の自身を振り返ってみたいものです。

マッキンゼー・アンド・カンパニーなどでリサーチ業務を行っていた著者は、問題解決につながる意味ある分析ができるようになるには情報に対する“体質改善(自分のものとして身体に取り込み、血肉に変える力の育成)”を行う必要があると指摘しています。そのために大切なのが、「調べるサイクル(“仕組み”“型”と言えます)」と「調べる領域(調べる際の“視点”と言えます)」を理解し、実践することです。

「調べる領域」はイメージが湧くと思いますが、「調べるサイクル」とはどのようなものでしょうか?実際はそれぞれを往復したり同時に進めたりしますが、シンプルにまとめると以下の通りです。

(1)知識・ギャップの認識
 “解”を導き出すために自分が知っていること、知らないこと(知らないといけないこと)を判断する。

(2)情報源リストとのすり合わせ
 知っている情報源のどこにアプローチすれば情報を得られるのか当たりをつける。

(3)情報獲得
 情報源から実際に情報を得る。そこから新たな情報源を見つけられることも。

(4)検証・判断
 集めた情報を鵜呑みにせず、情報の信頼性などを考えた上で判断をする。

(5)伝達
 分析結果をもとにアウトプットをまとめ、人に伝えてアクションにつなげる。

(6)リスト整備
 信頼できる新しい情報源、信頼性が落ちてきた情報源などをリストに反映する。次の分析の際に活かす。

いずれもとても大切なステップですが、私が特に重要だと感じているのが「(1)知識・ギャップの認識」です。何を知る必要があるのかを定めず情報をかき集めてきても、意味のある“解”が導き出せない事は往々にあります。情報の抜け漏れが多く、時間の無駄に終わることもあるかもしれません。ソクラテスの言葉に「無知の知」というものがあるのは有名ですが、自分は何を知らないのかを知ることが、古今東西問わず、とても重要なことなのでしょう。それはマーケティングの世界も変わらないのではないかと思います。

情報を扱うプロフェッショナルでも試行錯誤し続けている情報活用の領域。奥が深いものです。自分も都度、自分の情報の活かし方と向き合っていきたいと思います。皆さんはいかがですか?

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